出雲のものづくり【3】

第3回は、ガラス創作工房「Zap glass studio」布野 康さんを紹介します。

―吹きガラスをはじめたきっかけ

「ガラスってどうやって作っているんだろう?」「どうやって出来るんだろう?」と言う疑問からの始まりですね。高校3年の夏休みに進路をどうしようかと考えていた時期に、友達とふざけあって学校にあった花瓶を壊してしまって…。その時先生に「花瓶を元の形に戻せ」と言われまして、友人たちと遅い時間まで試行錯誤しながら花瓶を復元させました。その時にガラスを作る工程が気になって、自分なりに調べたんですよ。そんなこともあり、進路選びとも重なってガラス作りを学べる大学へ進学しよう思いました。学ぶにあたり、陶芸など焼き物系は複数ありましたが、ガラス作りはなかなか珍しい部類でして、少なかったんですよね。結果的には僕が想定していた内容と合致する大学を見つけて進学しました。

それにしても、よく入学できたなというのが素直な感想ですね。というのも、僕は美術とか絵とかにはまったく無縁の人間だったものですから…。大学入試までの数ヶ月くらいでデッサンの勉強をしたりして…ぶっつけ本番に近い無謀な挑戦でしたから(笑)。でもまあガラスと縁があったんですね。なんとか無事に入学することができました。それから現在までずっとガラス作りに携わっています。

―ものづくりへのこだわり

作り込まないということですかね。そこは意識しています。僕が作っているものは道具なんです。例えば花瓶は花を活けるための道具ですし、コップは飲料を飲むための道具です。それらは周りの環境があって成り立つもの、完成するものなので、あまり主張しすぎてはいけない。僕が作ったものが使う人の環境や感性によって仕上がるという感じが理想です。

なので、僕としては半分まで作っているといった感じですね。残りの半分は使う人によるといったイメージです。ここ2~3年でそんな風に考えるようになりました。吹きガラスを始めたころは、「どうだ!見てくれ僕の作品を!」という感じでガツガツしていました。ガラスを自分の支配下において思い通りにものを作るという自分本位の考え方でした。そんな考えが変わってきたのも、使い手の方々からの助言をいただいたことがキッカケでした。そこで気が付いて徐々に変化してきましたね。そんなこともあり、自分一人では成り立たないんだなと感じてからは、あまり作り込まないものづくりを心掛けています。

―ガラスの魅力について

作り手としは「思い通りにならないこと」ですね。まあ作り手=僕個人としてはですかね。先ほどガラス作りが学べる大学へ進学した話をしましたが、その大学の造形科は、焼き物・金属・木工・織りなど様々なものづくりが学べたんです。初年度に全てのコースを一通り体験し、その後専攻する流れでした。ガラスに興味を持って進学したんですが、その他のものづくりも体験する必要があって、1年間様々なコースでものづくりに取り組みました。自分で言うのも何ですが…手先が結構器用でして(笑)。どの分野でもそれなりに対応できて、平均以上の結果を出してたんですよ。それまで結構いい感じで対応でき結果も出せていたので、ガラスも同じ感じでいけると手ごたえをつかんでいたのですが…いざやってみるとクラスで一番ダメでした(笑)。ただ単に丸い玉を吹くという課題も作れなくて…。ガラス作りを学ぶために入学したのに、こんな簡単なこともできないことにショックを受けました。それが本当に悔しくて、なんとか形にしてやろうっていう気持ちで取り組みましたね。そんなこともあり「思い通りにならない」吹きガラスの魅力にどんどんハマっていった感じです。

作る側とは別に、ガラスを使う人にとっての魅力は「透けていること」透明であることじゃないでしょうか。透明ということですとプラスチックやアクリルなどの素材もありますが、ガラスの透けた感じは独特だと思います。そこに惹かれるし魅力があると感じますね。

―出雲について

僕は仕事で県外に行くことが多いですが、島根県から来ましたと言うと、大体は「出雲大社」のあるところですよね?と言われます。島根=出雲という認識は広がっているんじゃないでしょうか。それはとても良いことでしょうし、観光面で見れば必要なことかもしれませんが、僕個人としてはあまり過剰なPRは必要ないんじゃないかなと感じています。と言うのも告知しすぎると安っぽくなるというか、出雲が本来持っている神秘性などの魅力が見えにくくなる部分があるんじゃないかなと感じます。なので、無理に活性化しなくてもいいと思います。一気に熱がでて冷めるような、一過性の流行りみたいになって無駄に消費される必要はないかなと思っています。

―これからについて

色々ありますね。ありすぎて困る感じです(笑)。

ガラスの可能性といいますか…広がりを感じられる取組みをしてみたいですね。今、庭師さんと一緒に仕事をしているんですが、箱庭の中にガラスを採り入れた空間を作っているんです。それぞれの役割の中で調和のとれた世界が出来上がっていくのはやっていて楽しいですし、とても刺激的なことですね。また、ガラスと他素材を組み合わせてみて、どんな化学反応が起こるのかなどの取り組みも行ってみたいですね。今後も日々ガラスと向き合って、様々なことにチャレンジしていきたいと思っています。

ガラス創作工房「Zap glass studio」

布野 康

島根県出雲市芦渡町860-3

ホームページ

info@zap-glass.com


1975年島根県出雲市生まれ。2009年出雲にて築炉「Zap glass studio」主宰。2010年「ビアマグランカイ8」入選、島根県総合美術展工芸部門銀賞。2011年「日本伝統工芸展中国支部展」入選、島根県総合美術展工芸部門銅賞。2012年「ビアマグランカイ9」入選、島根県総合美術展工芸部門工芸連盟賞。「MAISON & OBJET 2013」「MAISON & OBJET 2014」出展。2016年、LEXUS NEW TAKUMI PROJECTにて47都道府県から52名の匠に選出。

2012年、山陰の手仕事を盛り上げようと、ジャンルの異なる5人の職人で『シマネRプロジェクト』を設立。翌年には、パリで開催された世界最高峰のインテリア見本市「メゾン・エ・オブジェ」にも初出展。

また、星野リゾート界出雲での匠の間のプロデュースなど、県内外でのイベントや販売など、幅広い活動を行っています。

吹きガラス体験:1時間程度で4,000円位から(要予約)。※材料費、制作物によって異なります。詳しくはホームページにてご確認ください。

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