出雲のものづくり【5】

第5回は、「Bench Work Tatenui」ヒノ タケシさんを紹介します。

―はじめたきっかけ

実家が生花業を営んでいた関係で、大阪でその関連の仕事をしていました。そんな時、京都に行く機会があって、その際に伝統工芸品の見本市へ行ったんです。その見本市で見つけた京指物の茶棚を見て「おおっ! これいいなぁ!!」と思って…かなりの衝撃を受けました。ものすごく惹かれました。それで、衝動的に「同じものを作ってみたい!」と思ったのがはじめたきっかけです。

もともと家具などの木工品を見るのは好きだったんですが、別の仕事をしていましたので、木工作家を目指していたわけではないんです。でも、京指物の茶棚を見た衝撃で一気に流れが変わりました。

早速、その作品の紹介欄に記載のあった木工所に行き、親方に事情を説明して「弟子にしてください!!」と頼みました。で、断られました(笑)。まあ、そうですよね。どこの誰とも分からない者が、突然押しかけて来て「木工所に入れてくれ!弟子にしてくれ!」と言われて「はい。わかりました。」とは言わないですよね。

親方にも「こういった仕事は何年も修行をして…」というようなことを諭されて。もちろん理解はしましたが、やってみたい気持ちの方が強かったので何度も通いました。その内に京都に引っ越し、親方にも「僕、京都に引っ越しました」と覚悟をアピールしていました。そうこうしている内に親方から指示をもらうようになりまして、技術習得に必要だという場所へ言われるがままにに出向きました。「機械操作を覚えるために技術学校へ行け!」と言われれば通い、「ウチの一番若い弟子でも3~4年は外で修行する!」と言われれば修行に出ました。親方はいつか諦めるだろうと思っていたようですが、僕は素直に「そうか、そうすればいいのか!」という感じで対処していました(笑)。最後は「そこまでやるなら…」と、弟子にしてもらうことができましたよ。最初の見本市で茶棚を見てから6年かかったことになります。

めでたく目的の木工所に務めるとこができて、職人としての仕事も楽しくやりがいもありました。ですが、時間が経てば経つほど、その道は非常に細く険しいものであると感じるようになりましたね。京指物の職人としての道を歩みたくて弟子入りをしたのですが、技術は残したいのに需要が少ない状況でしたので、進むべき道で悩みました。それと図面を渡されて「そのまま作る」という流れにも疑問を持つようになって…。

様々な葛藤の中で、修行時代に個人作家さんの工房で働いていた時に見たスタイルが自分には合っているんじゃないかと考えるようになりました。それは、直接お客さんと打合せをして、お客さんの暮らしを知り、その上で色んな提案をして「ものづくり」をするというものです。最終的には個人作家としての道を選択し、京都で独立しました。その後、長らく京都で活動していましたが、2017年にUターンという形で出雲に活動の拠点を移して今に至ります。

―ものづくりへのこだわり

「なんかいいな」と思ってもらえることに試行錯誤を繰り返して「ものづくり」をしています。そこがこだわりかもしれませんね。始めたころは伝統工芸への憧れから「技術」「歴史」などを継承するということが最も大事だという感じでものづくりをしていましたが、少しづつ意識が変わってきました。ただ単に「モノ」を作るのではなく、その背景や文化的なことなど、目に見えない裏側にある部分を掘り下げて思考することで、僕の作品を見た方々の感性に「何か」を訴えかけることができるようにしたいと考えています。

作品としては、線の細さや形が作り出す陰翳にもこだわっています。これは「出雲」という生まれ育った場所の気候や風土が影響しています。京都で活動はしていましたが、自分の感性の原風景は出雲にあるんだなということが、Uターンしてから強く感じています。

―ベンチの魅力について

「ベンチ」は一人でも座れますが複数人でも座れます。同じシートで場所の共有ができる空間が作れるというのが面白いなと思っています。椅子だと一人掛けですから、完全にパーソナルな空間になりますよね。でも仕切りのないベンチは「何か楽しいことが起こる可能性」がある様に見えて…(笑)。例えば個人宅と公園では「ベンチ」の使用用途も変わってきますよね。飲食店でもまた違った使い方になったりします。色んなシチュエーションで面白い空間の可能性が広がります。僕としては、そんなところがベンチの魅力じゃないかと思っています。

―出雲について

外から見たら分かることなんですけど、内側にいるとよく見えない部分があると思うんです。気づかないことが多いと言いますか…。地元の人たちにとっては当たり前すぎて気付かない部分が、U・Iターンの人たちによって、少しづつですが掘り起こされているように感じています。元々、出雲にあった「モノ」や「コト」がいい意味での変化をしていると言いますか…そういったことが、もっと広範囲で起これば面白いんじゃないかなと思います。様々な人々がお互いを受け入れ、楽しんで活動すれば出雲はもっといい方向へ変わっていくんじゃないでしょうか。

―これからについて

日本の木の魅力を発信できる機会を創設できればと考えいます。日本の樹種は世界的に見ても非常に多く、個性的で面白いんです。そういったことをアピールしていきたいですね。それと、木に関する総合的な提案もしていきたい。僕は木でベンチを作っていますが、その木には人をリラックスさせる効果があるわけなんです。森林浴という言葉もありますし、皆さんもご存知だと思います。でも、間違った知識もあるので、そういった部分も含めて「木」に関す専門家と話せる場所を作り、そこで様々な提案ができれば楽しいだろうなと考えています。ものづくりについては、ベンチの可能性を追求していきます。今後は室内外での活用方法などを提案していければと思っています。

「Bench Work Tatenui」

ヒノ タケシ

島根県出雲市平田町5469-1

ホームページ

インスタグラム

bwtatenui@gmail.com

1977年 島根県出雲市生まれ

京都・井口木工所にて修行 井口彰夫氏に師事

京都・西陣にて独立 108chajuを設立

2017年 出雲市平田町にてBench Work Tatenui設立

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